サスペンス

【ネタバレあり感想&考察】人間の生々しい我が身可愛さがどすっとくる。なぜあの人が…?について考察してみた「聖なる鹿殺し」

こんにちは。

今回は、聖なる鹿殺しを観賞しました。

引用元:映画.com

ポスターからしてもタイトルからしても何やら普通じゃないオーラを醸し出してくる雰囲気。絶対僕が好きなジャンルの映画ではないだろうなとは思いつつも、難しい映画を観た後に町山智浩さんの解説を聞くのにハマっているので、これも楽しめるだろう、と思い観賞しました。

この後僕は、こんな軽い気持ちで夕食前に観るんじゃなかったと後悔するのでした。

あらすじ

心臓外科医のスティーブンは眼科医の妻と、二人の子宝に恵まれ、幸せな生活をしていました。そこに現れたのは謎の少年、マーティンでした。スティーブンは、紳士的な好青年であるマーティンを家に招き入れ、家族ぐるみでマーティンと付き合うようになりました。しかし、スティーブンは必要以上に接触を図るマーティンに嫌気が差してきて、マーティンと少しずつ距離を置きだしました。丁度その頃、スティーブンの息子、ボブがの足が動かなくなり、医者に診てもらうも、どこにも異常がないという事件が発生します。スティーブンに無理矢理接触したマーティンは、スティーブンにこう告げます。「あなたは僕の父を殺した。あなた以外の家族に次の事が段階的に起こる。①手足が動かなくなる②食欲がなくなる③目から血が出る④死ぬ。ほっとけばあなた以外の全員が死にます。これを止めたくば、家族を1人選んで殺せ。」最初は信じなかったスティーブンでしたが、ボブが二段階目の食欲不振になり、長女のキムも第二段階まできたことをきっかけに、スティーブンはマーティンを捕らえて拷問し、解決策を吐かせようとするも、一向に何も吐かなかった。ボブが第三段階まで進行し、目から血が流れだしたのを見たスティーブンは、時間がないと悟り、最後まで決断を下せず、ロシアンルーレットの要領でランダムに銃口を向け、発砲する。二発外したのち、ボブに命中し失命する。生き残った三人は、カフェでマーティンと出会うも、無言のまま立ち去っていく。

作品情報

監督は、「ロブスター」や「女王陛下のお気に入り」で有名なヨルゴス・ランティモスが務める。心臓外科医のスティーブンは、「ファンタスティック・ビースト」シリーズでグレイプスを演じたコリン・ファレル、謎の少年マーティンは、「ダンケルク」でジョージを演じたバリー・コーガンが務める。

感想

胸糞悪いラストと不可解な謎が残るモヤモヤ感。好みが分かれるホラーサスペンスでした。僕はあまり好きではありませんでした。

胸糞悪いラストと人間の生々しい我が身可愛さ

あーー、気軽に夕食前に観るんじゃなかった!かなり胸糞悪い。。結局全てはマーティンの思うまま、ボブ(息子)を殺してしまうというラストに凄く重い空気になりました。

ラストも当然重い空気になるのですが、息子のボブを殺してしまうまでの流れが深刻。最初は仲良くて聞き分けの良いお子さんを持った素晴らしい家庭のように見えましたが、ボブの症状が進行していくにつれ、スティーブンは、「どうやってこの症状を止めよう」という考え方から「誰か殺さないといけない」という考えに代わっていきます。それを悟った家族たちは皆それぞれスティーブンに命乞いをしだします。箇条書きで下記に記載します。

  • ボブ(息子) … 父親から髪を切った方がいい、と言われたのを無視していたが、わざとらしく髪を切る。その後、「パパのような心臓外科医になりたい」と憧れている様子を示す。
  • キム(娘) … 下半身を引きずりながら家から逃げ出す。連れ戻された後、スティーブンに「私を殺して」とはいうものの、弟のボブには「あなたが死んだらマーティンにもらったMP3プレイヤーをちょうだい」と弟が死ぬと思い込んでいる。
  • アナ(妻) … ベッドで裸になりスティーブンを誘惑した後、「私ならまた新しい子を作れるから、殺すなら子供たちよ」と言う。

人間の我が身可愛さが滲み出てて苦しいような悲しいような、残酷な気持ちになりました。命乞いするのは分かるとしても、アナの「殺すなら子供よ」という発言は母親失格かと思いました。ここだけはどう考えても母親の発言じゃない。僕は物語中盤で、やっぱり誰かひとり殺してしまうんだな、と悟った時、子供たちの将来を考えたら、やっぱりアナが殺されてしまうのかなと思いましたが、全く違いました。まさかのアナが一番どぎつい事を言う。まじかぁ。同情するとしたらスティーブン以外の3人は何も悪いことをしてないという事。スティーブンが酔ってオペしたことが原因で、マーティンの父親を死なせてしまった事が原因で今回の復讐劇が始まったので、スティーブン以外の3人は完全に被害者。アナは悪くないにしろ、生命の危機が近付いたら、人間は豹変してしまうのかと、複雑な気持ちになりました。

考察が難しすぎる

この手の映画は考察が醍醐味だったりするのですが、メモを片手に暫く見ててもなかなか難しい。。

色々と謎が多い本作ですが、僕の中で大きく2つ残っています。

・ボブとキムの症状は結局なんだったのか?

・何故ボブが死んだのか?

あんまり納得のいくものではありませんが、僕なりに考えたので書かせていただきます。

ボブとキムの症状は結局なんだったのか?

これが一番気になってる!どんな医者に診せても異常なしと診断されるボブとキムの症状はなんだったのか?僕にはこれはマーティンの洗脳だったとしか考えられません。キムはマーティンの事を好いていましたし、ボブからしても兄のように慕われる存在だったので、マーティンが二人を洗脳することは可能だったと思います。最初は何かの脅しかエサで「足が痺れたふりをしろ」「食欲を失ったふりをしろ」という指示だったのかと思っていましたが、ボブが誰もいない部屋で這いつくばって移動していたり、キムがマーティンに足を治して、と懇願するシーンを見て、これは何か精神的な思い込みから自分は足が痺れている、と思い込んでるのか!と考えました。現に様々な分野の医者に診せていましたが、精神科医には診せていなかったと思います。どのような方法でかは分かりませんが、キムとボブは洗脳状態にあった、というのが僕の結論です。

何故ボブが死んだのか?

ボブが死んだのは必然なのでしょうか?僕は、スティーブンがボブを撃ったのはたまたまだったと考えています。何故なら「スティーブンは優柔不断であるので誰を殺すか決められない」ことと、「弾を二発外している」からです。

まず一点目の、「スティーブンは優柔不断であるので誰を殺すか決められない」という点ですが、僕が考えるスティーブン像は「人一倍プライドが高く、一家の大黒柱でありたいと思ってる。それでいて決断力に欠ける。」というもの。プライドが高いのは物語を観ていたら誰もが思うはずです。どれだけ自分が悪くても誰にも謝らない、挙句の果てに酔ってオペした事を認めるも、「どうせ助からなかった」と結果に対してミスを認めません。マーティンに家族を助ける方法を聞くときも、酔ってオペした事に対する謝罪ではなく、拷問するという手段をとる。決して下手にでない人でした。しかも、それでいて優柔不断です。子供のどちらかを殺すか決めるときも、子供の教師に、「どっちが優れているか?」を聞いて、判断を委ねようとします。確かにこんな苦渋の決断を簡単には下せない、という考えもありますが、家族を一人殺すという苦渋の決断を見知らぬ教師に委ねますか?仮にどうしても決められないとしても、裏でくじ等をして決めて決行するはずです。少なくとも他人には委ねない。この考えから、スティーブンが実はニット帽の裏から見て、ボブを狙ったのではなく、たまたまボブに当たったと考えています。

二点目の「弾を二発外している」という点ですが、これが僕の中で決定打でした。だって、狙って撃ってるなら二発外す意味はなくないですか?殺される側の恐怖を煽るだけで外すメリットがないと思います。逆に、「たまたまボブが撃たれたのを装いたかった」としても、二発外す意味はありません。あの状況で弾を外すのは撃たれる側からすると、とんでもなく地獄の時間ですし、撃つ側からしても精神的な苦痛なはずです。こういった考えから外すメリットはない=本当にたまたまボブに当たってしまったと考えました。

スティーブン目線でいくと上記のようにたまたまボブが撃たれたと考えていますが、ストーリー上ではボブが選ばれたのは必然だと考えています。それは、「ボブが一番人間としてまともだったから」だと考えています。この物語は、罪を犯したスティーブンに対して生贄を捧げさせる物語です。この罪はマーティンの父親殺しです。マーティンの家族で父は一家の大黒柱であったと考えると、家族の中でも痛手となる存在が失われたと思います。その観点でいくと、当然、スティーブンの家族の中でも最も人間的に優れていた人が生贄になるはずです。スティーブンは論外として、残りの三人で誰が優れているか、と考えたとき、思い浮かんだのは命乞いの内容でした。

先ほどの命乞いの内容を再掲します。

  • ボブ(息子) … 父親から髪を切った方がいい、と言われたのを無視していたが、わざとらしく髪を切る。その後、「パパのような心臓外科医になりたい」と憧れている様子を示す。
  • キム(娘) … 下半身を引きずりながら家から逃げ出す。連れ戻された後、スティーブンに「私を殺して」とはいうものの、弟のボブには「あなたが死んだらマーティンにもらったMP3プレイヤーをちょうだい」と弟が死ぬと思い込んでいる。
  • アナ(妻) … ベッドで裸になりスティーブンを誘惑した後、「私ならまた新しい子を作れるから、殺すなら子供たちよ」と言う。

どう考えても将来性もあり、まともな事を言ってるのはボブだと思いませんか?アナは子供を殺そうと提案し、キムは「私を殺して」という事で、逆に良い子だと思わせ、殺害対象から逃れようとしているように見えます。一方、ボブは命乞いをするものの、他社を蹴落とすような発言はしていません。この観点から、ボブが一番まともな人間=生贄の対象、という考えに至りました。

似たような考察をパラサイトの時のもしたので良かったら読んで下さい。

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まとめ

いかがでしたでしょうか?

簡単にまとめると、

  • 胸糞悪く、人間の我が身可愛さが出ている映画。自分にとっては苦手なタイプの映画
  • ボブとキムはマーティンに洗脳されてた
  • ボブが死んだのはたまたまだが、物語上死んだのには意味がある。それはボブが一番まともな人間だったから。

以上になります。慣れない考察にお付き合いいただきありがとうございます。

胸糞悪いんで暫くは希望に満ちた映画を観ようと思います(笑)